【空シリーズ:遠いばかりの空でした、でスザルルとシュナイゼル。(中)】
「えーと…一体どういう挨拶をしたのか、訊いてもいいかな。」
ルルーシュはやや躊躇いがちに沈黙を破った。シュナイゼルとスザクの顔を交互に見比べている。
「別に普通だけど。恋人ですって言っただけ。」
「彼は知っているようだったから隠すこともなかったからね、君の新しいお相手かねと訊ねたんだよ。」
ひくりとルルーシュの頬が引き攣る。ゆっくりと片腕が上って米神を押さえる。
「…にいさん、俺はそう節操がないわけではないんですよ。そんな言い方、」
「私が知っているだけで3人はいただろう。ああ、恩師とかいう男を入れたら4人か。手こずった男もいたんじゃなかったか。」
「落とすのに手こずったんじゃないぞスザク、別れるのに手こずったんだからな!」
「おや、彼の前では気にするのかい。私には悪びれもせずにあれはどうだのそれはああだのぼやいていたくせに。」
「結婚前提の交際と同時進行するような人に言われたくないですよ!」
「これまだ持ってくれているんだね。カートリッジも交換してくれているのか、大事にしてくれて嬉しいよ。」
「ほあっ!いきなり懐に手を入れないで下さい!」
「でも煙草はやめなさいと言っただろう。身体に悪いし眠れなくなるよ。」
「人の話聞いてます!?眠気覚ましに吸うんですからいいんです!」
「え、ルルーシュって吸うの?二十歳になったから止めたんだって扇さんが」
「どこまで喋ってんのあの人!?吸うよ!悪いか!」
「苦くなるから相手が吸わないなら止めたほうがいいんじゃないかね。でも今まで気づかなかったのならもしかしてまだ清い仲なのかい?」
「いえそこはそれなりに。これから仲良くする予定なのでそろそろお引取り願えますか。」
「こらお前は何を言っている!」
「ルルーシュちょっと落ち着いて。」
「そうだよ。香りを移さないよう気を使うくらい大事な相手なら疚しい素振りはしないほうがいい。」
「あなたがそれを言うんですかちょっと黙ってくださいスザクに言い訳しますから。」
「…。」
先ほどから取り見出し気味だったルルーシュがキッとシュナイゼルを睨みつけてからそう言った。思わず黙り込んだのはスザクである。
「いや、ルルーシュ、宣言してするものではないと思うのだがね。ほら、彼も微妙な顔をしているよ。」
「じゃあフォロー。どっちでも言うことは同じですよ。 いいかスザク、」
さすがにそろそろ揶揄かうのはやめにして引き上げようと、思い始めたあたりでの
ルルーシュの台詞にシュナイゼルの笑みも曖昧になった。フォローと言えばこれもフォローであったのかと首を傾げながら、がしりと相手の肩を掴んで口を開いた従兄弟を見守る。記憶にある彼よりも随分と逞しくなっているような気がするがこれはこれで面白い。心配するほどでもなかったかもしれない。
がしかし、枢木スザクの方が打たれ強さにかけては上を行くようで。
「なんですかキャプテン。別に怒っていませんよ。まさか遊びだとか繋ぎだとか、そんなひどいことを言い出さない限り僕はあなたを放さないつもりですし、浮気を許さないくらいには本気なわけで。そこのところ肝に銘じてくだされば今日は優しくしてあげますええ明日の家事は全部僕がやってあげますよ一日中ベッドにいてくださって構いません。」
「…。」
「もちろん風呂から一緒ですよね部屋まで抱いていって上げますからご心配なく。逃げようとしても無駄ですよルルーシュ。」
いい笑顔で言い訳ってなに?ほら言ってくださいよと迫るスザクがいつの間にかルルーシュの肩を引っつかんでいた。そろりと身を引こうとしていたルルーシュが視線を宙に泳がせる。先ほどの勢いはやはり勢いでしかなかったということか。あまりつつくと慌てだすところは変わっていないらしいと、昔を懐かしく思いながらシュナイゼルはルルーシュを眺めていた。そして口をついて出た「若いねぇ。」の台詞にルルーシュがすかさず噛み付く。
「半世紀も生きた人に言われると妙に居た堪れなくなるんでやめてください!大体スザクがしつこいんですよいつまでも放してくれなくて」
「焦らされるのが好きなくせになに言ってるんですか。」
「それは一種の処世術だ。」
「真顔で返さないで下さい嫌に生々しい。デリカシーがないと嫌われますよ。」
「自分に無いものを俺に求めるな。でも少し譲歩してやってもいい。」
「じゃあバック」
「話違うよね!?ちょっと慎ましくしてやろうかというつもりで俺はっ んんっ?」
「 あー、ちょっと苦いですね。歯磨きしてくださいね、僕は嫌いなんで。まあ今までもうまく隠してくれてたみたいですからいいんですけど。」
「そうそれ!隠してたんだよ!お前吸わないの知ってたしいつも禁煙席を選ぶからそうなのかなーと。」
「はい?何いきなり調子付いているんですか。隠してたとか嬉しそうに言うことじゃないですよね?ここはびしっと『人前でキスなんかするんじゃない!』と怒ってくれたほうが僕としては慎ましやかで好ましいんですが、」
「え、そう?じゃあ…にいさんちょっとあっちむいてほい。」
ルルーシュがだんだんおかしい人になってきてしまいました(土下座)