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俺の彼女はすごい美人だ。でも自分ではよくわからないのか、人見知りな性格にコンプレックスを抱いているそのせいであまり社交的とは言えない。友達も少ないし、男で仲良く喋るのなんか俺ともう一人リヴァルくらいだ。だから俺は安心して遊びもするし、他の彼女の存在を匂わせても知らん振りのルルーシュが面白くなくて、意地悪はどんどんエスカレートする。

だって、ライバルが現れるなんて思っても見なかったんだ。

ライバルは俺


その日俺はとても遅い時間にアパートに着いた。二人で暮らすには少し狭いけれど、静かでいつも片付いていて彼女の香りのするその部屋はとても居心地が良かったから、付き合い始めてすぐの頃に転がり込んだ。ルルーシュは困った顔をしていたけど、彼女が寂しがりやなのは俺が一番よくわかっている。親元を離れて仲の良かった妹とも滅多に合えず、近くに住んでいた友人もキャンパス替えで引っ越してしまってからは、ひょっこり彼女の家に帰る俺の顔を見て嬉しそうに笑うのを知っている。すぐにいつもの愛想の無い顔に戻ってしまうのは解っているけれど、それが見たくてついつい外泊や深夜の帰宅を繰り返してしまう。今日も素直じゃない可愛い顔を見せてくれるのかなと、内心の期待を押し隠してノブを回した。
そこで見たものは。
「スザク、これはどう?初めて作ってみたんだけど…」
「へぇ、  うん、おいしいよ。ルルが作ったものならなんだって喜んで食べます。」
「そんな、まずかったらそう言っていいんだからな?無理は」
「していないよ。まさか。でも物足りないからデザートはルルがいいな…」
「ゃ、そんなスザク…」
「ちょっとまったあぁぁー!!」
俺(ちょっぴり今の自分よりがたいがいいかもしれない)によく似た男といちゃつきながら頬を染めるルルーシュだった。


*******


「で?そこのそいつは十年後の未来からやってきた俺だと。なぜか戻れないからルルーシュのところに転がり込んだと。優しいルルーシュは食事を恵んでやったと。ふざけるなぁー!!」
「ふざけてなんかいないよ。ほらこんなにそっくりじゃないか。」
にこにこと胡散臭い笑みを浮べて『俺』が顔を近づけてきた。全力で後退する。何が悲しくて自分の顔(認めたくは無いが)を至近距離で眺めなければならない。
「近づくな!」
「うん、できれば僕も青臭い頃の自分とお近づきになりたくないね。」
「ルルーシュにも近づくな!」
「いいじゃない。僕の奥さんになる人だよ。」
「え///」
「マジで!?ゴールインできるの!?やったぁ!じゃなくてルルーシュッ、黙って肩を抱かれているんじゃない!嬉しそうに頬をそめるなぁー!」
「だってお前と違ってこのスザク、すごく優しいんだもん。大人だしかっこいいし、き、キスも上手で///」
「人の彼女に何してるんだー!!」
「今からナニをする予定ですがなにか。」
「宣言しちゃうの!?よし宣戦布告と受け取った!今すぐお前をつまみ出す!!」
「残念。言っておくけど歳は食っても僕の方が君より強いよ。 えい!」
どすんと、放り投げられて天井が見えた。ここ四階じゃなかったっけ。下の人に怒られそうな気がする。
「ってそうじゃなくて自分に会っちゃいけないって何かで読んだ気がするぞこのドッペルゲンガー!」
「いけないことはいけないけど、大丈夫だよ、死にはしないから。心配しないでルル。」
「そうか?あ、スザクお風呂の準備ができたから先に入って」
「こらそこさりげなく俺をはぶるな!ルルーシュは新婚夫婦のように世話を焼くなー!!」
「スザク(小)うるさい。お隣さんに迷惑だろ。スザク(かっこいい)お布団はスザク(小)のを使っていいから。」
「『(小)』とか『(かっこいい)』とか面白くない区別をするなぁー!」
「スザク(がき)ちょっと声落として。注意されるのはルルなんだから。」
「スザク(大人でかっこいい)///」
「ルルーシュぅー…(涙)」
ぱたり。


*******


翌朝。(※俺スザクは叫び疲れてダウンしました。)
「  ん?朝か…俺の布団…夢か、夢だったんだな。ルルーシュが入れてくれたのかなやっぱり優しい俺のスウィートエンジェル…ってやっぱりマジかよそこから出ろ『俺』ー!!」
うっとりと大人スザクにくっついていたルルーシュの様子では床に転がされても仕方が無いかもしれないと、意識が落ちる寸前はひどく哀しい気持ちになったものだ。それがいつものようにルルーシュのベッドの隣に敷かれた布団で目が覚めて、なんだあれは夢だったんだルルーシュは変わらず優しいままでと幸せな気持ちになっていたスザクはふと見上げた光景に飛び起きた。
「なんだよもう…朝からうるさいなぁこれだからガキは…。」
「ガキって言うけどお前の過去だろうがぁ!なにちゃっかりルルーシュのベッドに潜り込んでいるんだよ今すぐ出て行け!!」
抱き枕よろしくルルーシュの華奢な(痩せすぎで少し骨が当る)体を抱え込んだまま大人スザクが起き抜けの気だるい声で言った。
「ん…すざく?おはよう…」
「おはようルル。『僕』がうるさくてごめんね。もう少ししたら落ち着くと思うから我慢してやって。」
「余計なお世話だ!いいから早くルルーシュを離せ!!」

(※一頻り叫んだので俺スザクさんはちょっとすっきりしました。ので、以下は朝食の席でしっかりルルーシュを抱え込んで警戒しつつ、一応は三人静かに食卓を囲んでいる状態です。)

「…来たからには帰れるんだろ。」
「うん。あと一時間もしたら帰れたと記憶しているね。」
「本当に!?よかったぁ…もう一日も一緒にいたくなかったんだ。」
「冷たいなぁ僕。」
ルルーシュは黙ってシリアルを飲み込んでいた。ちらりちらりと二人のスザクを覗き見るが、俺スザクの方は気づかないでむっつりと顔を顰めている。僕スザクの方は目が合うとにっこり笑い返してくれる。やっぱり大人のスザクの方がかっこいい。
「…そういえば十年後は俺とルルーシュ、結婚してるんだって?」
スザクは話題を転じた。未来のことを知るまたとない、というか奇跡のようなチャンスだ。逃す手は無い。メリットはそれしかない。僕スザクを睨みつけながら訊ねる。
「うん。大学を出て二年後に結婚して一年後に子どもが生まれて二人目は年子だよ。」
「本当に!?」
「写真見る?もうやばいよ、天使。ルルと三人並んでマイ・スウィートエンジェル。」
「み、見る見る!」
スザクとルルーシュは二人で差し出された写真を覗きこんだ。きちんと正装をして写真館で撮ったものなのだろう。ルルーシュもスザクもスーツを着て、まだ1歳と0歳の赤ん坊は一人ずつ両親の腕に抱かれている。
「…美人。」
「…スザクかっこいい…。」
両親の面影を受け継いだ子どもたちはもちろん二人の目を引いたのだが、実感が伴わないために未来の自分たちの方に注目してしまう。今よりも長い髪をして薄っすらと化粧をしたルルーシュにスザクは見惚れ、細身の三つ揃いを着こなしたスザクにルルーシュは溜め息を零した。
「こうなるとわかっているならお前と結婚してやってもいいぞ、スザク。」
「こうなると知らなくても結婚する気満々だったよルルーシュ。」
「こうやって押せ押せでくっついたんだよねぇ僕たち。大丈夫だよルル、僕は絶対浮気もしないし仕事が終わったらまっすぐ家に帰る模範的な夫だからね。」
僕スザクは若干引き気味のルルーシュに向かってしみじみと言った。結婚する頃にはもう少し大人になっているから安心して。
「むむ…ところで今の俺はその、未来に行ったり過去に行ったりできないのか?」
「できないよ。というか出来なかった。未来にはこの僕も行けないみたいだし。だから僕のルルには手出しできないからね。」
「俺は今このルルーシュがいてくれたらそれでいいんだよ!ちょっと訊いて見ただけだ。」
「! スザク…」
「あとついでに、俺はなんでそんな丸くなってるんだよ。父親になったとか、そんな理由で自分がころっと変われるとは思えないんだよな。」
俺スザクはルルーシュが目を瞠って小さく上げた声に気づかなかった。ひそやかに落とされた笑みも、見とめたのは正面に座っていた大人スザクだけだった。
「それはね、あ、時間だ。」
「ちょ、いきなりだなって、浮いてるー!?」
ふわりと宙に浮いた自分を見て目を丸くする二人を見て、大人スザクはにっこり笑った。
「『俺』は『僕』にルルーシュを取られるのが嫌だったんだ。必死に背伸びしてね、頑張ったんだよ。また来るね!」

「き、消えた…ん?また来るのか!?冗談じゃないぞ!」
しゅるりと消えた人間に遅ればせながらの叫びを上げると、ルルーシュがくすりと笑う気配がした。
「なんだよ。どうした?」
「なんでもない。あと三年後かぁ。今度はいつ会えるのかな。」
「こら!相手が俺でも浮気は許さないぞ!」



fin.


結局は何がなんでもルルーシュを手に入れたいスザクさんが過去を修正していくわけですね。その過程で俺→僕になって強かにルルーシュを落としていくわけです。
オチもまとまりもなくて申し訳ありません。ファイルを整理していたら発掘した代物です。収拾が付かなくなったので放置しておりました(そして結局そのまま…)。もったいないお化け(土下座)!



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Caricature ||| Owner: soto ||| Opened:December 5th, 2006