出会いは空の上3
「よぉスザク!お前、機長不在で故障機を無事着陸させたんだってな。やるなぁおい!」
パイロット仲間で同じコーパイのリヴァルが、スザクの肩をがしっと掴んだ。
BAW社のオペレーション・ルーム。先立ってのトラブルで社も世間も持ちきりだった。スザクは一人で機長不在のジャンボ機を無事に下ろした新米コーパイとして、一躍有名になったのだけれど。
「手伝ってくれた人がいるんだ。」
浮かれる気のいい友人に、さりげなく話を振る。僕が一人でできたことじゃない。
「へ?だって◆◆便には航空関係者は乗っていなかっただろ。通信にはお前の声しか記録されていないし、コックピットへ向かった乗客なんて確認されていないって、報告されているだろう?」
リヴァルの不思議そうな表情に、スザクは目を細めた。答えはわかっている。これは確認だ。
「いや、いたよ。うちの先輩。パイロット・イン・コマンドの、ルルーシュ・ランペルージキャプテン。」
リヴァルが黙り込んだ。視線を泳がせて、躊躇いがちに口を開く。
「…それって、七年前に起きたハイジャック事件で犠牲になった機長のことか?」
やはりそうか。スザクはこれまで安全問題のセクションに異動されたことはなく、事件の概要しか知らなかった。病的ハイジャック犯に、両腕と腹部を刺されてなお機体を無事地上に下ろしたPIC。
「名前は知らなかったんだけど。彼が来てくれたから僕も乗客も助かったんだ。一人ではきっと、不運な結果になっていた。」
パニックになって、あのたくさんの命を載せた機体を棺桶にしていた。
ルルーシュがコックピットに現れてからおかしいとは思っていたのだ。酸素マスクをつけている自分がなお呼吸に難儀するほどの異常事態。何食わぬ素顔で現れ、エマージェンシーコールの鳴り響く中、微塵の焦りも恐れも見せずに冷静に指示を出して。そもそもコックピットは中から鍵が掛けられている。ランペルージ機長の事件から、管理体制が見直された。今は見学も断っている。
そして最後にはふらりと消えた。よくやったとスザクの肩を叩き、礼を言おうと顔を上げた次の瞬間に彼の姿は消えていた。
「お前って、そっちの感覚あんの?」
「実家が神社でさ。小さい頃から色々見たり聞いたりして来たんだ。悪いものと良いものの区別もなんとなく。彼は、とても安心できる人だった。」
ふうと息をついてバッグを抱えなおす。これからまたフライトだ。呼び止めたリヴァルは戻りでこれから休憩に入るそうだが、自分はこれからが本番だ。踵を返して歩き出す。
「あれ…でもランペルージ機長って…ん?おいスザク!人の話は最後まで聞けって!おーい!」
手を振って声を上げるリヴァルの声は、聞き逃した。