男が好きなのかと言われれば?
迷うところだ。自分は真性の同性愛者ではない。が、しかし。

二人で空の下2

「もしかして昨日から今までずっと寝てた?」
おかえりと掛け布の間から顔を出してまた、もぞもぞと布団の中に潜り込もうとしたルルーシュを慌てて引き留めて訊ねる。不機嫌そうというよりは睡魔に引き摺られてとろんとした目でルルーシュが答えた。
「うーん?何時…あぁ昼…そうかな、そうかも。おやすみ、」
「こらこらだめです起きてくださいキャプテン!」
耳元で叫んでぐいと上半身を抱き起こす。そのままくたりと身体を折ってうーと唸るくぐもった声を聞きながらスザクは溜め息をついた。
経度を稼ぐフライトはまず当然に時差ぼけがついてくる。日本発の行きはまだいい。少し驚いたことにルルーシュはあちらに着いてからも日本時間で過ごし(つまり昼寝て夜起きて明け方に食事を摂るといった不思議な生活パターンが展開される)、無理やり体内時間を整えて戻りのフライトに備えるのが常なのだが、これはFAとは違いパイロット同士はせっかく一緒のホテルに泊まっているのに観光の一つもできないとスザクを悔しがらせたものだ。いや、これもどうでもいいことであった。問題は帰国してからである。ルルーシュは神経質な性質ながらどこでも寝られると言う特技を持っていた、のだそうだ。狭い上に全身をベルトで固定したクルーバンクで4時間ほどのレスト。12時間ほどのフライトでまともに休めるのはその時だけなのだが、それでも十分だったよと、念願の二人揃ってのロンドン行き。笑いながら引っ込んだルルーシュが酷い顔色をして交代だとコックピットに戻ってきた時は驚いた。そして同時に仕方がないのかもしれないとも考えた。七年間。身動きが取れない恐怖はその身体に刻まれていてもおかしくはない。仕事には厳しい人だから、機上でだらしない姿を見せることはなかったけれど。
まあ、つまり何が問題なのかと言えば、オフの日はルルーシュの活動レベルが著しく落ちることである。四日間拘束されれば次の日から四日間、同じだけの日数を休みとしてもらえるのが普通なのだが、ジェットラグのせいで最初の二日ほどはぼんやりしていることが多い。今のように半日以上ベッドの中で過ごすこともざらで、そうは一緒にシフトを組めるわけでもなく休みも互いに不規則なために、スザクはできればルルーシュにちゃんと起きてもらって二人の時間を過ごしたかった。
「寝すぎると逆に疲れるよ。ごはんも忘れてたんだろ。起きて起きて。」
「…若いなぁ。」
観念したのかゆっくりと起き上がったルルーシュは軽く頭を振って呟いた。
「気の持ちようだよ、ルルーシュだって感覚としては僕と同じくらいなんだろ。」
「でもどうしたって身体は重いんだよな。よっ、と。」
小さく掛け声を上げてベッドから降りたルルーシュは髪を掻きあげながらバスルームに足を向ける。黙ってその背を見つめていると細い指がツイとキッチンのカウンターの上を指した。
「スイカ?ルルーシュが買ってきたの?」
「ああ。夏だし、暑いし。冷やしたかったけど冷蔵庫に入らなくてさ。」
一個丸まるの大玉スイカ。包丁を入れて半分に割れば収まらないわけではないのだが。
「じゃあ切って冷やしておこう。夕飯のデザートにはちょうどいいかな。」
「…主食でいい。今切っておいて。」
「ばてるよ。何か作るから早くシャワー浴びてきて。」
ひらひらと手を振って応えたルルーシュを見送って、スザクはスイカを抱えて包丁を取り出した。自分しか触れない刃物。この家でまともに料理をするのはスザクだけだ。よく冷えるよう切り分けてラップをかけたスイカを冷蔵庫にしまう。一段をうめている簡易栄養食の類。

あの事件は、ルルーシュから七年間を奪っただけではなかった。


生活能力が低下したルルーシュさんを放っておけなかったんです。

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