「そん な…嘘だろう…?」
仮面の下から現れたのは。
Kight−7
ゼロは四桁に届かないレジスタンスのグループを率いてエリア11でいくつかの日本軍の部隊を潰していた。その手腕は鮮やかで、武器の類では決して有利なはずはないのに手堅く勝利を収めていく。しかしその命運もここまでだった。質、量ともに国家が擁した正規の軍隊に俄か仕込のテロリストが抗し得る限界はもうとっくに超えている。ゼロが日本軍の手に落ちるのは時間の問題だった。
「向こうもわかっているだろう。これ以上の戦闘行為に意味はないと。降伏を呼びかけるか?」
藤堂が思案顔で提案する。既に日本に対する反発と恨みだけで、ゼロの率いる黒の騎士団は戦っていた。
「そうだな。あの仮面がちゃんと前を見ているなら応じるくらいの頭はあるだろう。場合によっては直近の恩赦の取引を持ちかけてもいい。」
騎士団はゼロ一人の求心力で持っているような集団だった。やつを潰せば瓦解する。リーダーとしてほんの少しでも仲間を思う気持ちがあるのなら、ゼロは大人しく日本軍の下に下るだろう。
果たして。
予想通り彼はこれ以上の戦闘行為を全面的に放棄した。
「仲間にはよく言ってある。私がいなければ彼らが自ら動くことはない。」
「無気力な市民を焚きつけてテロリストごっこか。ふざけるな!王子は寛大なお方だ。お仲間にはそれなりの対応を検討して下さるだろうが、お前は、これだぜ。」
少々気取りに過ぎる玉城が、縛り上げられたゼロの目の前でにやりと笑って首を掻ききる仕草をした。まだ仮面をつけたままのゼロは身じろぎもせずにそれを睥睨している。
「何だよ、何か命乞いでもしてみろよ、あぁ?」
「玉城、それぐらいにしろ。」
黙ってそのやりとりを見ていたスザクだったが、不穏な空気が漂い始めるのを見とめて静かに遮る。人払いをさせて-皆がゼロの仮面の中を知りたがったが-、藤堂と自分だけを残し、スザクはゼロの前に立った。
「俺はブリタニアに対して何の恨みも持ってはいない。」
スザク王子が手厳しくナンバーズのテログループを抑圧するのは、幼い頃表向きは留学、その実人質としてブリタニアに滞在した際に、ブリタニアから不相応に軽んじられその仕打ちを恨んでいるからだと実しやかに囁かれていた。実際は降伏するものにはこうして刑の処断も考慮してやるし、むやみやたらと血を流すことを望んでいるわけではないのだが、如何せん戦場での王子の鬼神の如き戦いぶりは、見る者を震え上がらせ何か根深いブリタニアへの恨みでもあるのではないかと勘繰らせるには十分であった。ブリタニアの皇家が。よくも余計なことをしてくれたと、かつては敬ったはずの至尊の血を貶すナンバーズも少なくない。
ゼロは黙ったままだった。
「俺はブリタニアで大切な友を得た。何よりも大切な、美しい男だった。彼はブリタニアの皇子だったが、命を懸けて俺を守ってくれた。」
かすかに、本当にかすかにゼロの肩が揺れたような気がしたが、スザクはそのまま話を続ける。
「だから。お前のようにブリタニアの名を語り、俺が知る最も気高い存在を貶める輩は許せない。内乱罪の首謀者は終身刑か死刑だ。これだけは動かすわけには行かない。」
「それはそうだ。私は抵抗するつもりはない。仲間を救ってくれるのなら、この命などいくらでも差し出そう。」
初めて間近で聞いたゼロの声は、声紋すら弄ってあるのだろう仮面の装備のせいで不自然に深く響いたが、どこか懐かしいような何かを感じて、スザクはふと眉を顰めた。ゼロの、言葉も誰かを思い出させる…
「お前、まずその仮面を外してもらおうか。」
腕を後ろ手に縛られているゼロにはどうにもできない。黙ったままの男に、その無言は仕方のないものだろうと納得して、スザクは自ら黒い仮面に手をかけた。
一体どんな顔をしている。ブリタニアの名を持ちながら、無駄な犠牲を強いて彼の名を穢した。ルルーシュと、少しでも似ていようものなら、自分がこの手で冥府に送ってくれる…
「 あ?」
「どうした?日本の王子。」
怪訝そうに首を傾げたゼロは、焦がれた人そのものだった。
どうして。ルルーシュ。