映画は二時間で幸せになれるの。好きって言って、キスだってできるのよ。真っ白なウェディングドレスを着て、私はあの人の腕の中で笑う、約束されたハッピーエンド。
でもね。
現実はそうじゃない。

はじめまして、ルルーシュ!-1

「会長、その話本当なんですか?」
「100パーセントなんて言えないわよ。私だってまだ自分の目で見たわけじゃないし、シャーリーに会ったわけじゃない。」
リヴァルの言葉に、ミレイが返す。
戦後の話だ。どこへともなくゼロが姿を消し、一度は膨れ上がった極東の戦火はあっけないほどのささやかな燻りで以って消え往った。あちこちにその爪あとを残してはいるけれど、人々の表情はようやく平和を取り戻そうとしていた。
アッシュフォード学園も再開した。エリア全体の復興に時間がかかり、二年近くの休校措置を経て今はかつての賑やかさを取り戻している。二年生だったリヴァルやニーナ、中学生だったナナリーも再び日常の平穏へと戻っていった。ミレイは最後のモラトリアムが延びたわと気丈な笑みで以って二人の友人の喪失を耐えて見せたけれど、諦められなかったのだろう。ずっと人手を使って探していたらしい。
シャーリー・フェネットとルルーシュ・ランペルージ。
生徒会のメンバーというそれだけのつながりではなかった。大切な幼馴染であり親友だった二人だ。シャーリーの母は夫を失いまた残された一人娘まで失踪し、一時期入院を余儀なくされるほどの憔悴振りだったのだが、いつの間にか落ち着いていた。心配して何度か見舞っていたミレイが訝しく思い、すまないと躊躇いつつも問いただせば、シャーリーから住所不明の手紙が来たのだという。突然いなくなってごめんなさい。私は元気です。いつか必ず帰るから、どうか心配しないで待っていてください。
誰にも自分のことを話さないで欲しいと前置いて、戦争孤児を預かる孤児院の手伝いをしているのだと伝えてきた。子供たちはとてもかわいいですと明るい文面。最後にぽつりと、大好きな人と一緒にいます---
「大好きな人って…」
シャーリーの、ルルーシュに対する気持ちは親しい者なら皆が知るところだ。他人ごっこなどと、様子のおかしな二人を見ていて心底不思議に思ったものだ。だが、全てが明るみに出た今は不十分ながら理由に想像もつく。ルルーシュはゼロだった。そしてゼロがシャーリーの父親を殺していた。二人が妙によそよそしくなったのは、葬儀のあとだった。
「親の仇と憎んでも、本当に好きになった人への想いを消してしまうことなんてできないわ。二人とも、辛かったでしょう。」
目を細めながらそう言うミレイを、スザクは醒めた目で一瞥した。
「シャーリーは、そうでしょう。でもあいつは自分に都合のいいことは全部なかったことにして嘘をつき続けた。」
ルルーシュは、ギアスと言う超常の力でシャーリーから自分の記憶を消し去るか何かしたのだろう。ルルーシュ、あるいはゼロを前にしての不可解な言動から察するに。それは逃げであり裏切りであると、スザクは考えていた。
「まぁ、さ。ルルーシュだとは限らないじゃないか。戦中戦後のごたごたで、誰と知り合いになっていてもおかしくない。」
リヴァルは硬い声音のスザクをたしなめるように、のんびりと返した。今日はミレイ、リヴァルそしてスザク四人で目撃情報のあったシャーリーを訪ねようとしている。孤児院の数は総じてこのエリアには多くない。しらみつぶしに人をやれば、シャーリーと同じ年頃の少女が、租界から離れた場所で手伝いをしているという情報が手に入った。ルルーシュについては何も。そもそも彼はスザクが自分の手で討ったのだと軍にも報告されていた。ただその死を確認する余裕はなかったため、ゼロは生死不明のまま、しかし忽然と表舞台から姿を消したことだけは確かであった。ではなぜ彼が彼女と一緒に一緒にいると暗黙の了解であるかのように語られるのか。それは偏に少女の純粋な想いを一番近くて見ていたミレイが、『大好きな人』の一言に何事かを見出したからである。
「会えばわかることよ。」
そう、会えばわかる。シャーリーとルルーシュの生死も、なぜ二人-であってほしい-が親しく付き合いを持った自分たちに-ナナリーにすら-連絡を寄越そうとしないのか。
緊張に表情の乏しくなるのを苦笑に紛らわせながら、辺りを見回してそれらしい建物と地図を見比べてミレイはあそこよと指を差した。子供たちの声が聞える。健全な施設なのだろう。明るい笑い声だった。門から続くこじんまりとした庭で、きゃあきゃあと戯れる幼い少年少女に混じり、
「ルルー、シュ…」

誰が呟いたかもわからない名前に、一人の青年が振り向いた。
「はい?なにかご用ですか?」

真っ白な髪をしていた。左目は漆黒の色で覆い。



短くまとめます。登場人物のチョイスの甘さはいつもの事ながら失礼いたします(深々)。
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