「見学に来られた方ですか?えっと、院長室までご案内すればいいのかな…どこに入れたっけ、」
「ぼくが連れて行ってあげるよお兄ちゃん!」
「わたしもお手伝いしてあげる!」
なにやら手元の携帯端末を操作しながら呟くルルーシュに、子供たちが纏わりついていた。

はじめまして、ルルーシュ!-2

「ルルちゃんッ!あなた、どうして何の連絡も寄越さなかったの!」
「え?」
容姿の変化-黒が白に変わっただけなのだが彼の艶やかな漆黒の髪は非常に美しくまた珍しいものであったのだ-にしばし立ちすくんだミレイであったが、すぐに気を取り直してルルーシュに詰め寄った。リヴァルもそれに続く。
「そうだぜ。俺たち探したんだぞ。心配もしたし、話してもらいたいことだってたくさんあったんだ。お前を、軍に突き出すつもりはない。そうだよな、スザク?」
「状況次第だ。」
普段の調子よりは神妙に言い、振り返って念を押すリヴァルにスザクはやはり硬い声で返した。
「…軍?俺は何か重大な事件にでも関わっているのですか?」
躊躇いがちに、不安そうに、ルルーシュは訊ねた。警察ではない、それはただの個別犯罪を犯しただけでは片付けられないことを意味するわけで物騒なことこの上ない。無関係であればいきなり突きつけられて戸惑う言葉ではあるが、彼はとぼけているのだろうかいやしかし…。
一瞬口を噤んだ一同は顔を見合わせて事態を飲み込もうとした。予想の内の一つではあった。記憶喪失。嘘か真か。
「ルルーシュ、私達のことがわかる?」
「…いや、申し訳ないのですがみなさんのことは俺の頭の中には残っていなくて、」
「おにいちゃん!シャーリーおねえちゃんから電話だよ。」
怯えすら滲んでいるような片目できょときょとと訪問者を見つめていたルルーシュは、家屋の入り口も程近い位置であったせいかコードレスホンを手に駆け寄ってきた子供の言葉に、はっきりとその細面の顔は安堵の色を浮べた。
迷子の子供が不安な捜索の時を経て母親を見つけたときのような、幼いとすら言えるような様で目元を緩め、子機を受け取る。
「ああシャーリー。荷物が 多いのか?迎えにいこうか?------大丈夫だよ、まだ時間はあるから。あと一時間近く残っている---そうか?うん、じゃあ待ってるから…それと、俺のことを知っていそうな方々が訪ねて---え?急にどうし…シャーリー?うん?気をつけて帰って来るんだぞ!…切れちゃった。……。」
嬉しそうな会話の間、腕時計を見つめて言った『一時間近く残っている』に、後に控えた用事があるのだろう云々の想像は難くないのになぜか違和感を覚えてしまったのは。あまりにも神経質に時間を-今も-気にする素振りが目についたからで、十分な会話もないまま通話を切ったシャーリー-ああやはり彼女はここでルルーシュとともに-を寂しげに端末の上に追ったルルーシュが、
昔と寸分違わない冴えた目を向けてきたからだった。

「俺のことを知っているんですね?今の話しぶりからして彼女もあなた方について心当たりがあるようだ。もしかしたらシャーリーのこともご存知でしょうか。」
先ほどまでのどこか心もとない話しぶりは消えていた。真剣な表情でルルーシュは目を細めた。一体どういった了見でシャーリーと一緒にいるのだと、ゼロの手によって主を失くした遠くはない過去をまだ燻らせている-仕方のないことではあるが-スザクは胸倉を掴みかからんばかりに拳を握り締めて通話が終わるのを待っていたのだが。逆に、一足早くルルーシュがスザクに詰め寄った。
「教えてください。俺の過去と、おそらく罪と。」

心配そうに彼の腕を取り、時計を気にする子供たちの様子を目に留めたのは誰だったか。




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